令和5年 年頭所感
生産性の向上を目指して
明けまして、おめでとうございます。今年も引き続き、栃木県経済同友会活動への、ご理解とご協力をお願いします。年頭にあたり、私の所感を申し上げます。
昨年の栃木県の経済は、日本経済と同様に、「物価高」と3年越しの「コロナとの闘い」であったと言えると思います。そのような中、栃木県経済は底堅く推移して、目立たないが、景気回復がなされた年でした。
そして、最終月の12月開催の「日銀金融政策決定会合」で、サプライズがあり、長期金利が実質引き上げとなりました。日本も「金融正常化」に向けて第一歩を踏み出したようです。今後の短期金利を含めた展開が気になるところです。
さて、現在の世界的な「物価高」は、供給サイドが、支障をきたしたことが、主な要因になって発生しました。米国以外では、需要サイドが大きく増加したことが、要因ではありません。米国においては、「コロナ禍」からの回復過程において、サプライチェーンの目詰まりや雇用の変化に加えて、内需が好調で、需要サイドが大きく増加しました。更には低金利政策による住宅ブームが到来し、家賃や人件費の高騰、また半導体不足等が、大きなインフレをもたらしました。そこにロシアのウクライナ侵攻が加わり、サプライチェーンの分断とともに、「脱炭素」への思惑も絡み、資源・エネルギー価格高騰となりました。
「コロナ禍」からの回復が日本に比較して早かった欧米においては、強い「物価高」と「インフレ」を引き起こし、欧米ともに政策金利引き上げに走りました。主に、この金利引き上げが日本の為替相場を円安に導き、日本企業の事業環境を大きく変化させました。輸出立国である日本にとっても、急激で変動幅の大きい「円安」はプラスではないということです。
栃木県は、製造業の県内GDPが高いので、「円安」のメリットとデメリットの両方の影響を受けてくると思われます。しかし、中小・零細企業ほど、価格転嫁が難しいという意味で、デメリットを受ける懸念が高くなると思います。従って、今後懸念されている「円高」が進行した場合でも、そのデメリットを、何らかの形で中小・零細企業は受けやすくなります。
また、先進国は、サスティナブルという考え方から、「脱炭素」を世界経済の「起爆剤」にしようと考え、取り組みを開始しました。「脱炭素」の取り組み範囲を「スコープ3」まで広げていくようですので、中小・零細企業も当然対象に入ってきます。
2050年までにカーボンニュートラルを達成しようとすると、一部の試算では、約450兆円の資金が必要になると言われています。政府は約20兆円のグリーンボンドを発行し、差額資金への呼び水にしたいようですが、中小・零細企業においては、非常に難しい問題です。「脱炭素」の設備投資を行っても、それがすぐに利益に結び付く可能性は低く、むしろ設備投資をしないと、今後の仕事の受注に支障をきたす恐れがあるということです。まだ、取引先から「脱炭素」に向けた具体的な要望があるという話は聞いていませんが、今、中小・零細企業に求められるのは、生産性を上げて、「脱炭素」に耐えられる「設備投資能力」の確保ではないか、と思います。また、「生産性」がアップしていかないと賃金上昇にも取り組めず、東京への一極集中の解消にも支障をきたすでしょう。更には、今後、地方での人材確保をより難しくしていくものと思います。
「デジタル化」は生産性向上の有力な手段であり、「デジタル化」が進んでいない企業は、待ったなしの状況であると思います。
「デジタル化」は業務プロセスを可視化できるので、どこを「効率化」するのか、「見直し」が必要な部分はどこか、収益の源泉はどこにあるか等、判明しやすくなります。
また、10月から開始される「インボイス制度」は、否応なしに中小・零細企業のデジタル化を促進することになるでしょう。従って、早期の取組が重要です。
このような「デジタル化」の進展によっても「生産性」の上がってこない企業は、「次の展開」を改めて考えていかなければなりません。
日本も「金融正常化」への「歩み」を始めています。マイナス金利、ゼロ金利という異常事態から脱却して、リスクに見合った金利設定が進んでいくと、「生産性」の低い企業は耐えられず、結果として「企業の新陳代謝」が進んでいくと思われます。
また、国が進めようとしている「リスキング」等の「人への投資」や「スタートアップ企業支援」及び「新分野進出支援」等は、労働力を移動によって確保しながら、日本企業を活性化させる観点からも、大変重要であると思っています。
上記に加えて、日本の成長には、「潜在成長力」アップも必要と言われていますが、その要因の一つである「生産年齢人口」の実質増加が必要になります。今までは、女性の社会進出や高齢者の参加機会拡大を中心に、賄ってきました。今後は更に、「質の高い」外国人労働者の受け入れに取組む必要があると思います。「円安」日本において、どのような受け入れ態勢が必要か、更に検討していかなければなりません。「少子高齢化・人口減少」が、都市部に比して大きく進む地域経済の発展には、「質の高い」外からの労働力を導入していくことは、消費拡大という視点も含めて、必要ではないでしょうか。
このように考えていくと、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)は、やはりキーワードであり、そこに向けてどれだけ近づける「企業」や「地域社会」を作り上げることが出来るかが、最終的には「地方創生」「地域活性化」に繋がっていくと思われます。
地方に住む「若者」が生産性の高い仕事に就いて、高い収入を得られ、豊かな生活を送れる社会が最終目標でしょう。それが出来ないと、東京一極集中は解消されないと思います。
栃木県経済同友会では、そのような思いの中、「デジタル」「グリーン」「地域活性化(安全・安心)」を主要テーマとした委員会活動を行っています。テーマ自体が、自分たちの経済活動に直結しています。
みなさんの英知を結集して、素晴らしい「委員会活動」や「講演活動」につなげていきたいと思います。
どうぞ、本年もよろしくお願いします。